2008年5月20日火曜日

建築家は詐欺師だ!

こんな言葉に出会った。自分が直接言われたわけではないが、とある知人が漏らした言葉だった。自分も建築設計に携わるものとして、無神経ではいられない。では、何故このような印象を持つ人がいるのか。どうやら、建築家のコスト意識に原因があるようだ。勿論すべての建築家に当てはまる批判でないことは、言うまでもないが、コスト意識と聞いて創造するに難しくない状況が簡単にイメージできる。
エンドユーザーの視点からするとこれぐらいの予算の中で、最高のパフォーマンスのものを設計して欲しいと頼んだはずが、設計中に予算に対するアドバイスは少なく、優れた提案を毎回持ってきて説明してくれるのだが、いざ実行見積もりを取ってみると、はるかにオーバーした見積書が手元に届けられる。ダブルスコアーなんてことも、時としてあるようだ。少なくない時間を費やして設計を終えたところで出てきた、現実に、設計者を変更するなど後には引けない状況まできており、泣く泣く増額した工事費をのむか、費用を調整するために夢が詰まった設計を崩してゆく打ち合わせに時間が割かれる。もし自分が逆の立場であれば、そうした経緯から生まれてくる感情は、冒頭の”詐欺氏だ!”となってもなんら不自然ではないと思う。
設計者は工事を請け負う訳ではないので、工事金額を手前勝手に操作することは出来ない。ただ、プロとして自分が行っている設計がどのくらいの工事費になると予測を立てられないようでは、いったいどんな責任を持って業務を行い報酬を得ているのか、まるでわからない。
"「コスト下手」が設計を蝕む"少し前になるが4月28日付けの日系アーキテクチャの特集だ。そのなかで、良い言葉を見つけた。"工事費積算とは設計が完了した後に行うことを指すのではなく、常に設計と同時に進めるものである。"と。自分が経営するMS4Dでは、このコストコントロールに力を入れている。社内に積算士こそいないが、普段、入札を行った後、アシスタントスタッフでも見積書を査定する。施工業者が提出する見積もりの妥当性を検証するためだ。査定が出来るのであれば、積算は逆の手順を踏めばよいと考えれば、簡単な積算は出来る。工事費とにらめっこしながら設計を進めるわけだ。
相手の立場に立って見て、良いな、と思えること、そして今すぐにでも実行できることは、常にトライしていきたい。我々のような小さなアトリエ設計事務所が、社会的信用を勝ち得るには、勿論、独自の理念を構築し発信し続けることもさることながら、こうした些細な不信感を1つづつ丁寧に取り除いていくことも大切だと考える。

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