2008年7月15日火曜日

残念

先日残念な知らせが届いた。都内屈指の地価評価額を有する立地における、商業テナントビルの設計の引き合いがあったのだが、キャンセルとなってしまった。提案内容がお粗末で、断られたのであれば、致し方ない。自分の実力が足りないのだから、さらなる精進を目指し、ポジティブに事態を捉えなおせば良い。だが、今回のケースは提案すらさせてもらえなかった。指名コンペティションノミネート枠からはずされたと言ったほうが分かりやすい。一等地における開発としては珍しく、開発ディベロッパーが全体をコントロールしているわけではなく、地主自らが設計者を探しているタイミングで、自分は知り合い、コンペの話は当初より持ち上がっていた。単なるガラス箱のような建物ではなく、今後のその地区の町並み形成を考慮した際のスタンダードとなり得るような、工夫とアイデアが欲しい、と語るオーナーの要望に、自分たちなら答えられる!と意気込んでいたのだが、最終的なコンペ参加企業は、老舗や大手総合設計事務所だった。信頼、実績、会社規模、体制、資本額などが判断基準のウェイトを占め、創造性やデザイン性は2の次の基準だったと聞いた。自分自身自慢できるほどの実績もない。会社も小さく若い。構造や設備は外注。大手と対等に渡り歩く総合力があるとは、とても言えない。ただ、創造行為を育む環境は整い始めているという実感はある。
クライアントサイドに立って考えれば、いくらアイデアや創造性による可能性を求めたとしても、事業全体を総合的に捉えた際、デザインや創造性による効果はごく1部分でしかないことはうなずける。何らかのリスクを伴ってまでして、求めるには値しない価値なのか。たまたま今回のテナントビル業態がそうさせたのか、世の中の多くの建築オーナーがそのように思うのか、考えさせられる出来事だった。

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